【印刷初心者向け】デザインデータの「塗り足し」とは?仕上がり線・セーフティーゾーンとの関係を完全ガイド2025年12月1日 公開 

【印刷初心者向け】デザインデータの「塗り足し」とは?仕上がり線・セーフティーゾーンとの関係を完全ガイド

印刷物のデザインで初心者には分かりにくい「塗り足し」「仕上がり線」「セーフティーゾーン」について解説します。正しい知識を身につけて、プロ品質のデザインデータを入稿しましょう。

印刷データ作成でつまずかないための基礎知識

イメージ通りの印刷物を完成させるためには、「塗り足し」「仕上がり線」「セーフティーゾーン」という3つのキーワードの理解が必要です。正しく理解せずにデータを作成すると、予期せぬデザインの失敗や再入稿の原因に繋がる可能性があります。

「塗り足し」「仕上がり線」「セーフティーゾーン」とは?

印刷物のデータ作成で品質を確保するためには、「塗り足し」「仕上がり線」「セーフティーゾーン」をしっかりと理解する必要があります。

まず「仕上がり線」とは、印刷物が最終的に断裁されて完成するサイズを示すラインのことです。実際の印刷物の仕上がりサイズとなります。

次に「塗り足し」とは、仕上がり線の外側へ、デザインの背景色や写真をあらかじめ広げておく領域です。一般的に、仕上がり線から外側に3mm程度の幅で設けることが推奨されており、断裁時に切り落とされます。

最後に「セーフティーゾーン」とは、仕上がり線の内側に設定される安全領域のことです。多くの印刷所では、1〜2mm程度の断裁ズレが発生する可能性があるため、仕上がり線からさらに3mm以上内側に重要なデザインを配置するとより安心です。

項目名概要推奨される位置・目安
仕上がり線最終的に印刷物が断裁されるサイズを示す線最終仕上がりサイズ
塗り足し断裁時のズレで紙の白場が見えるのを防ぐ領域仕上がり線の外側3mm程度
セーフティーゾーン重要な要素が断裁されるのを防ぐための安全領域仕上がり線の内側3mm以上推奨

「塗り足し」「仕上がり線」「セーフティーゾーン」の詳しい説明は、図解でわかる!入稿テンプレートの3つのエリアの役割で紹介しています。

図解でわかる!入稿テンプレートの3つのエリアの役割

実物のテンプレートを例に「塗り足し」「仕上がり線」「セーフティーゾーン」の具体的な役割を図解を交えながら詳しく解説します。

仕上がり線:印刷物が完成するサイズを示すライン

仕上がり線は印刷物が完成するサイズを示すライン

「仕上がり線」とは、印刷物が最終的に断裁(カット)され、完成品のサイズを示すラインです。実際の印刷物の最終的な形を決めるため、「裁ち切り線」とも呼ばれます。

たとえば、A4サイズのチラシを作成する場合、仕上がり線で囲まれた範囲は縦297mm×横210mmとなります。印刷後に納品される最終的なサイズとなるため、デザインの構図や文字の配置を考える上で、仕上がり線を基準にすることは重要なポイントです。

塗り足し:裁断時のズレを防ぐための拡張エリア

塗り足しは裁断時のズレを防ぐための拡張エリア

「塗り足し」とは印刷物の仕上がりサイズの外側に、背景や写真などを意図的に配置する「予備の印刷範囲」のことです。

印刷物は大きな紙にまとめて印刷された後、断裁機で最終的なサイズにカットされます。しかし、この裁断工程では、数ミリ単位のわずかなズレが生じる可能性があります。

わずかなズレによって、デザインの端に紙の白い部分(地色)が意図せず現れることを防ぐのが塗り足しの役割。白いフチの発生を防ぐため、デザインをあらかじめ仕上がり線よりも外側へ広げておく必要があるのです。

一般的に、仕上がり線の外側に、上下左右それぞれ「3mm」の塗り足しを設定することが推奨されています。入稿データを作成する際は、背景やオブジェクトを塗り足しの範囲までしっかりと伸ばしましょう。

セーフティーゾーン:文字やロゴが切れないように保護する内側の範囲

セーフティーゾーンは文字やロゴが切れないように保護する範囲

「セーフティーゾーン」とは、印刷物の仕上がり線よりもさらに内側に設けられた「安全な領域」のこと。文字やロゴ、QRコード、イラストの主要な部分など、絶対に切れてはならない情報を配置するために設定される範囲です。

重要なデザインがわずかなズレによって断裁されてしまうリスクを防ぐ目的で、セーフティーゾーンが設けられています。会社名や連絡先、商品名など正確に伝えたい情報は、必ずセーフティーゾーンの内側に配置しましょう。

セーフティーゾーンは一般的に、仕上がり線より3mm以内、あるいは3〜5mm程度内側に設定されることが多いですが、印刷会社や商品によって推奨される範囲が異なる場合があります。入稿データを作成する際は、必ず利用する印刷会社が提供するテンプレートや指定に従うようにしてください。

これだけは避けたい!塗り足し・セーフティーゾーン設定ミスによる失敗例

「塗り足し」「仕上がり線」「セーフティーゾーン」それぞれの設定が不十分であったり、見落としがあったりすると意図しない印刷トラブルが発生し、最終的な仕上がりに大きな影響を与えてしまう可能性があります。

見落としがちな典型的なミスを知ることは、再入稿による余計な時間やコストを無駄にしないためにも重要です。

実際に起こりうる失敗例として、以下の3つを具体的に取りあげます。

・端に意図しない白いフチが出てしまった
・大事なロゴやテキストが裁断されてしまった
・均等なはずのフチのデザインがズレてしまった

【失敗例1】端に意図しない白いフチが出てしまった

【失敗例1】端に意図しない白いフチが出てしまった

代表的な失敗例は印刷物の端に意図しない白いフチが出てしまうケースです。

これは、塗り足しの設定が不足しているか、あるいは全く設定されていない場合に発生します。印刷会社にもよりますが、「3mm程度のズレは許容範囲」と定めている場合もあるので注意しましょう。

【失敗例2】大事なロゴやテキストが裁断されてしまった

【失敗例2】大事なロゴやテキストが裁断されてしまった

次に多く見られる失敗例として、重要な文字やロゴが印刷物の端で裁断されてしまうケースです。

これは、デザインの基本となる「セーフティーゾーン」を考えずに文字やロゴを仕上がり線のぎりぎりに配置したことで発生します。断裁時にわずかなズレが生じた結果、本来なら残るべき情報が欠けてしまうという問題です。

大事なロゴやテキストが欠けてしまう失敗は、ブランドイメージの低下に繋がりかねません。ロゴや連絡先など確実に伝えたい重要な情報は必ずセーフティーゾーン内に収めましょう。

【失敗例3】均等なはずのフチのデザインがズレてしまった

【失敗例3】均等なはずのフチのデザインがズレてしまった

均等な幅の枠線(フチ)をデザインに取り入れる際、印刷の断裁ズレによる落とし穴があります。仕上がり線に合わせて細いフチをデザインした場合、断裁がわずかにズレるだけで、フチの幅が上下左右で不均等に見えるという失敗です。

たとえば、デザインの断裁が右に1mmずれてしまうと、右のフチは1mm細く、左のフチは1mm太く見えてしまう、といった現象が発生する可能性があります。特に細いフチはわずかなズレでも視覚的に非常に目立ち、デザイン全体のバランスを大きく損なう原因となるため、注意が必要です。

この失敗を防ぐためには、以下の点に注意するとよいでしょう。

・フチを仕上がり線ギリギリに配置しない
・フチを仕上がり線から最低でも3mm以上内側のセーフティーゾーン内に配置する
・断裁ズレが視覚的に目立たないよう、フチの幅を太くデザインする

【アイテム別】デザインデータの入稿解説

印刷物のデザインデータ作成において、商品の特性に合わせたテンプレートの活用は重要です。特に形状や素材が特殊な商品の場合、一般的なデザインデータ作成とは異なる注意点があります。

ここでは、ほしい!ノベルティで販売している、クリアファイル、タオル、ふせん、パッケージ類のテンプレート例とそれぞれの商品特有の注意点を解説します。

クリアファイル

オーソドックスなタイプのクリアファイルの入稿テンプレートを紹介します。

クリアファイルテンプレ

クリアファイルの入稿テンプレートには「塗り足し」「仕上がり線」「セーフティーゾーン」が設定されています。セーフティーゾーンが設けられているため、ロゴや重要な文言など大切なデザインはセーフティーゾーン内に配置しましょう。

クリアファイルの印刷では、「塗り足し」「仕上がり線」「セーフティーゾーン」以外に白色インクの使用が重要なポイントです。透明素材に直接色を印刷すると下地の色や背景が透けて見えてしまうため、色を鮮やかに表現したい部分には白色インクを下地として印刷し、その上に色インクを重ねる「白引き印刷」をおこないます。

データ作成時には、白インクを印刷する領域を指定するための「白版」レイヤーを別途用意する必要があるので注意しましょう。

ほしい!ノベルティで取り扱っているファイルのテンプレートには、折り曲げ線や背幅、ポケット位置などが明確に示されているので、ガイドラインに従ってデザインすることで、仕上がりのイメージを正確に把握できます。

タオル

ほしい!ノベルティで取り扱っているタオル印刷は「シルク印刷」、「昇華転写印刷」、「ジャガード織」の3つです。それぞれにそれぞれに適したデータ作成が必要となります。

シルク印刷のタオルの場合

シルク印刷のタオルテンプレ

シルク印刷の場合は「塗り足し」「仕上がり線」「セーフティーゾーン」は設定されていません。印刷範囲の枠内にデザインを配置すればOKです。

昇華転写印刷のタオルの場合

昇華転写印刷のタオルのテンプレ

昇華転写印刷のタオルは「塗り足し」「仕上がり線」「セーフティーゾーン」が設定されています。

ロゴや重要な文言など大切なデザインはセーフティーゾーン内に配置しましょう。背景全体に色を付けたりデザインを配置したりする場合には塗り足し部分まで作成してください。線の太さは約0.5mm以上、文字の大きさは約H7mm以上が推奨です。

タオルは1枚ずつ手作業で仕上げているため、形状にわずかな個体差があり、仕上がりに最大約1cmの誤差が生じる場合があります。そのため、データ上では均等に見えるラインや余白でも、実物ではバランスが揃わないことがあります。デザインを考える際にはできるだけ避けたほうがよいでしょう。

ジャガード織タオルの場合

ジャガード織タオルのテンプレ

ジャガード織タオルの場合は「セーフティーゾーン」のみ設定されています。ロゴや重要な文言など大切なデザインはセーフティーゾーン内に配置しましょう。線の太さは約2.5mm以上、文字の大きさはパイル部分が約H20mm以上、ヘム部分が約H15mm以上が推奨です。

印刷方法に限らず、タオルへの印刷では細かい線や小さな文字は避け、太めの線や大きめの文字を使用するのがおすすめ。特に、筆記体や飾りのある書体は、タオルの繊維に埋もれて判読しづらくなることも考慮するとよいでしょう。

付箋

付箋はカバー無しタイプとカバーありタイプがあります。

カバー無しタイプ

付箋カバーなしのテンプレ

カバー無しタイプの付箋には「塗り足し」「仕上がり線」「セーフティーゾーン」は設定されていません。印刷範囲と糊範囲が設定されています。印刷範囲の枠内にデザインを配置すればOKです。

カバーありタイプ

付箋カバーありのテンプレ

カバーありタイプの付箋には「塗り足し」「仕上がり線」「セーフティーゾーン」が設定されています。ロゴや重要な文言など大切なデザインはセーフティーゾーン内に配置しましょう。背景全体に色を付けたりデザインを配置したりする場合には塗り足し部分まで作成してください。

付箋の場合は限られたスペースに効果的にメッセージやロゴを配置する必要があります。デザインの際には視認性と情報量のバランスを考慮することが重要です。

パッケージ類(コーヒー・お菓子など)

ほしい!ノベルティではコーヒーやお菓子、お米などのオリジナルパッケージを作成することができます。

パッケージ類のデザインデータは、パッケージを平面に広げた状態の「展開図」に基づいてレイアウトが必要です。

お菓子パッケージ(森永 オリジナルハイチュウ)の入稿テンプレートを紹介します。

おかしパッケージテンプレ

「塗り足し」「仕上がり線」が設定されています。

パッケージ類のデザインデータで特徴的なものは「のりしろ」がある商品が多いこと。のりしろ部分は他の部分と重なって見えなくなる領域です。そのため、重要なデザインやテキストがのりしろにかからないようにしましょう。

パッケージは折りたたまれて立体になるため、折り線をまたぐようにデザインを配置すると、完成時に意図しない見え方になる可能性があります。特に重要な文字やロゴは、ひとつの面内に収まるようレイアウトするようにするとよいでしょう。

また、食品パッケージでは法的な表示義務がある情報(原材料、栄養成分など)を必ず記載する必要があるため、テンプレートに成分表示が固定で入っています。成分表示の配置移動や削除は不可となります。

これで安心!入稿前の最終確認チェックリスト

印刷データを入稿する前に最低限確認すべき項目をご紹介します。

・背景や写真は塗り足し範囲まで届いているか
・大切なデザインがセーフティーゾーン内に入っているか
・断裁ズレが発生しそうなデザイン(仕上がり線に合わせたフチなど)の場合、仕上がり線ギリギリに配置していないか

ぜひ活用し自信を持って入稿作業を進めてください。

まとめ

「塗り足し」「仕上がり線」「セーフティーゾーン」の3つについて、役割、設定方法、設定ミスによるトラブル事例を解説しました。

印刷物を断裁する際にはミリ単位のズレが生じる可能性があります。ズレは避けられないため、事前にデータ側で対策を講じることが極めて重要です。

この記事で得た知識を活かせば、印刷データ作成時の不安が解消され、自信を持って高品質な印刷物制作に取り組めるでしょう。

2025年12月1日 公開 2025年12月1日更新

この記事を書いた人

なべこ

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